人との繋がりから一切隔離された場所でキャンプがしたい。
人のいない静かな場所でゆっくりとキャンプがしたい。
キャンプ場では何だかんだ人も多いし、結局社会の中から出ていくことができません。
そんな時、人里離れた山奥や河原等でキャンプをする場合があります。
しかしこのテーマは賛否両論があります。
正直このテーマを扱うかどうかも悩んだのですが、この記事においては明確な結論は出さず、色々な意見や課題があることをご紹介していきます。
ここでの「野営」の定義は、誰の土地でもない場所にテントを張ること
誰の土地でもない山の中に入ってキャンプをすることを、ここでは「野営」と定義します。
野営という言葉だけでは定義は様々ありますが、この記事の中においては、キャンプ場等の施設を利用することは野営とは言わないこととします。
公営で「キャンプ地」とされている場所でもなく、何でもない山奥や河原に行ってテントを張り、そこで野宿を楽しむのです。
誰にも邪魔されず、自分だけの空間を楽しむことができます。
トイレもなければ炊事場もないので難易度は高い
野営は楽しそうな面がありますが、なかなか一般人向けではありません。
最も大きな理由は、トイレがないことです。
汚い話になりますが、自分の排泄物は凝固剤で持って帰る等の対応をしなければなりません。
▲ロゴスの携帯式トイレ。防災用品を使ってトイレをすることもできる。
動物の糞尿は肥料になるので深く掘れば埋めても良いような気もしますが、これも難しい問題なので、簡単に答えを出すことはできません。
臭いのリスクはないのか?何らかの拍子に埋めたはずのものが出てくることはないのか?など。
散歩中に犬のフンは埋めないというのがマナーなのに、人間のフンは埋めてもいいのか?などなど。
問題は山積みです。
何センチ掘れば臭いリスクがないとか、どのような土なら分解されやすいだとか、もしかしたらそういう話もあるのかもしれませんが、少なくとも、この時点で和気藹々としたファミリーキャンプとは程遠く、かなりワイルドな行為となります。
もちろんトイレがないのだから炊事場もなく、全てを自分で用意しなければなりません。
法律的に問題ないのか
さて、野営の定義について書いたところで、本題に入ろうと思います。
最初のトピックにして、賛否両論が分かれる最大のテーマでもあるのが、「法律的に問題がないのか」という話。
これが非常に曖昧で、「森林法や消防法等で禁止されている」、という意見もありますし、「明確な規制はない」という意見もあります。
しかし実際に条文を見てみると分かりますが、かなりあいまいな表現で、判例がないと議論の対象となるのは仕方ないような気がします。
また、森の中ではなく海岸や河原は所有者がいないので問題ない、焚き火をしなければ問題はないという意見もあります。
他にも解釈が分かれる部分が多くあり、最も議論が絶えないポイントだと思います。
しかし明確に条例で禁止されている地域もあります。
例えば静岡県では「特定の区域におけるキヤンプの禁止に関する条例」というものが施行されており、6月1日~9月30日の間で、明確にキャンプが禁止されています。
参考リンク : 静岡県ホームページ
これを破ると条例違反になるのですが、裏を返すとその期間・区域以外では特段規制されていない、ということになります。
地方自治法においては、条例は法令よりも下位(法令の範囲内で制定)とされているため、このような条例が施行される以上、法令では規制がないと解釈することもできます。
だからと言って全国に於いて普遍的に同じことが言えるかというと、それも懐疑的です。
脱法ドラッグと同じことではないか、という指摘に対しては何とも言い難い部分があります。
また、とある掲示板のディスカッションの中には、「どんなに気を付けていてもテントの下の新芽を潰すし、気づかないゴミや環境汚染が起こる」とも書かれていました。
これも一理あると思います。
公営の場所には、明確に”キャンプをしていいよ”とされている公園等の無料キャンプ場、明確に”キャンプはダメだよ”とされている禁止区域、そしてどちらとも何も言われていないグレーゾーンがあります。
このグレーゾーンは公的機関から何かしらの明確な指針が示されない限り、議論は絶えないでしょう。
この部分が「野営」に関する最大の議論であり、賛否両論があるところでもあります。
スポンサーリンクそこは誰かの所有地かも
しかしながら、「国のものは国民のもの!」という意見も分かります。
国民が働いて納めた税金によって維持されているものですので、ルールを守っている限りは利用する権利があります。
しかし本当にそこは国の土地でしょうか?
日本の山林のうち約58%は個人や企業等が所有している「私有林」であり、勝手に入ってキャンプすることは許されません。
出典 : 森林・林業学習館
しかしどこが私有林でどこが公有林、そしてどこが国有林なのか、分かるでしょうか?
もちろん下調べすれば分かるので、ちゃんと調べている方は胸を張って問題ないと言えるでしょう。
また、河川敷は国有地の場合がほとんどなので、その点はリスクが低いと言えるかもしれません。
ただし、堤外民有地という私有地もあるので、その点は注意が必要です。
しかし少なからず、その場所が私有地か国有地かよく分からず野営している人もいるのではないでしょうか。
誰かが所有している土地で勝手にテントを張ってキャンプをするのは、それは当然違法行為です。
もしかしてこの間テントを張ったあそこも、誰かの土地かもしれません。
その区別がつけられるのか?というのも課題の一つです。
行政もしくは所有者の許可が取れるか?
では、最終的に何を基に判断したら良いのでしょうか?
それは「自治体または所有者の許可を取る」ということです。
難しいと思いますが、自治体なら自治体に電話して、テントを張って良いか確認許可を取れればOKです。
もしくは、山そのものを買ってしまい、自分のものとする、というのも選択肢の一つです。
最近では、山をレンタルするようなサービスもあるので、それもニーズを反映したやり方だと思います。
これが出来れば、胸を張って野営を楽しむことができます。
それ以外の野営がダメなのかどうかは、どうしても議論の対象となるでしょう。
もし行政に許可を取る場合は、メールなどでエビデンスを残しておいた方が安心です。
スポンサーリンク野営をする人が増えた将来はどうなるか
これは個人的な意見になりますが、もし野営をする人がどんどん増えたら、いずれ明確に規制されると思います。
野営をする人が増えた将来、それが環境破壊に繋がるのは想像に難くないでしょう。
野営をする人が皆原状復帰を心がけていたとしても、圧倒的な試行回数の前においては悪意のないイレギュラーケース(ゴミを見落としてしまう人や山火事を発生させてしまう人等)も出てくるでしょう。
「管理されていない」ということは人間のモラルやマナー、良心が問われるものでありますが、私の知る限り人類皆善人ということはなく、一定数はこれらを守らない輩が出てきます。
今でこそ明確な基準はありませんが、もし今後野営をする人がどんどん増えれば、それが原因で規制されるのではないでしょうか。
本当は、皆が自然を大切にしながら、マナーを守って使えると言うのが理想なのですが、年齢を重ねれば重ねるほど、世の中そうはならないことを嫌という程思い知らされます。
考察まとめ。議論の絶えない難しい問題
繰り返しになりますが、「野営」という行為についての議論は、行政からの明確な指針や判例が示されない限り、続いていくことでしょう。
野営というテーマは非常に扱いにくく、この記事を書くかどうかも非常に悩みました。
私は「グレーゾーン」という表現をしましたが、反対派の人から見ると「いや、グレーではなく明確に法律違反だ!」という人もいるでしょうし、賛成派の人からは「法律には一切抵触していないんだからグレーではない!」と言われるかもしれません。
私は明確に意思をもって「グレーだ」と言っているわけではなく、白派と黒派の中立として、グレーという表現を使いました。
このように様々な主張のあるテーマを取り扱う場合、どれだけ細心の注意を払ってもキリがありません。
この「野営」という問題に関する議論はまだまだ続きそうですが、一つ言だけ言えることは、全員が自然を大切にする気持ちが何よりも大切だという事です。
これは野営に限った話ではありませんが、人類皆善人で理想的な社会になっているのであれば、きっとこんな議論もなかったのかもしれません。